【小説】死後

死んだらどうなるか。色々な宗教が色々なことを考える。
実際はこうである。死んでからも世界の続きを知ることができる。小説として。私は病気で死んで、一冊の本の読者になった。私の生きていた世界の続きを綴った物語の。こう言った方が正確だ。死ねば、生きている人たちのいた小説の世界から閉め出されて読者になるのだ。
好きだった人が私がいなくなってからも幸せに生きるように。そう願って私は死んだ。死んだら無になると思っていた。私の意識は消えると思っていた。私の見ていない世界で、彼が別の人と幸せになることを願いさえした。
ずっと私を好きでいる。私が死んでも。彼はそう言った。私は曖昧に笑った。本当にそうあってくれるかはわからないけれど、その時そう思ってくれたのが嬉しかった。それで十分なはずだった。物語はそれで終わるはずだった。
しかし今私はその続きを読まされている。時がたち彼は他の女の子と仲良くなった。小説の中で。私はただの読者である。私がここで何を思っても叫んでも、小説の中の人物には全く関係がない。