こうなると全部知ってた木の葉散る
恋の歌避けて歩けば栗おこわ
あの頃の君を今恋う衣被
ふわふわの九月をずっと眠っている
木の実雨つぷつぷその下を走る
水馬森室長の居た後に
どこまでもクッキー伸びる夜長かな
此処に居て良いのですかと桔梗咲く
安らかにあらんや一人静汝は
終戦日思い出せない名の一つ
部屋 蜘蛛が未だ通っていない部分
秋晴や葬儀の列に鼻炎の人
認知症吾いつもの席にいつもの栗
記憶だけ綺麗に語り合う月夜
敬老の日の若人の歌必死
ゲーム曲流れ果無し十三夜
間を持たせるためにフォークで食う
鴨来るを覗く目どこの床屋にも
秋憂い言葉ぱっくりだくだくと
蝶数多解釈数多付き快晴
やたら欠伸のラジオ体操大人ばかり
口中に穴ぼこ数多秋渇き
秋暁や歯医者完璧なる匂
公園の大茸みな気味悪がる
黍団子重ければ腰痛からん
鵙の贄ありてエルフはベジタリアン
冷房の部屋ダンスして汗もかかず
捨てんとす麦酒缶よりアイスの棒
稲たわわに稔り黒色矮星に
潮風の裸眼にて見る遠花火
太陽に黒点打上花火にも
夕刻やバーベキュー一瞬静か
私も少し筋肉付けたい裸の腕
尻へ行く汗と足首へ行く汗
干柿と吊る二本目の親不知
眠る女ゼリーの中の桃爛れ
急いでゆきいそいで帰る蝉時雨
ベアリングの音も残酷なる晩夏
溽暑なる柔軟剤の液白し
君が楽しいか全力で気にしながらゲームをした目が痛い
寂しいときは唐辛子を食べる
コンビニにアイスを買いに行ってきます
信じていたゼリーの縁で指を切る
ビー玉を出せる優しいラムネなり
車が無事へこむ瞬間を見た
夏休みの頭の上をヘリの音
蝉の死骸を今なら踏んでもいい
独りなので全部思い通り
生御霊より聞く弱い者の知恵
暑い雨の日の呉服屋閉まっている
空蝉や延々と米噛んでいる
卒業に調度良い苦しみの恋
新しい標的探す虫篝
鴫焼の昨日の残りまた残る