【俳句】2017年9月22日~2018年1月23日

一人セピア色の句だけを詠む
雪明るすぎてなにもすることがない
雪掻きの人ら健全なる雪よ
雪掻きの道を赤カーペットのように
失恋の中にいて息薄白き
命も愛もそっと消え行き冬の浜
村時雨みんな違っていて寂しい
一月の言葉は人を別つもの
初詣する人間や群れに群れ
人間のにおいをさせて春を待つ
もう泣かないから湯たんぽを返して
出ていった鮫は悲しくないと言う
春の星多分地球で死ぬだろう
上手く話せないけどどうか、冬茜
春陽の中に閉じ込められている
手袋なくして言葉は意味を失えり
健康な海鼠であれば針で突く
入学児大きく「さようなら」と言う
蛇穴を出るよ待つのは嫌いなの
羊日も同じ景色や夕焼けて
猫の子のあとは陳腐な後日譚
欠けのあるものに憧れ枯芙蓉
皆が僕を捨てる権利を葛の花
クリスマス兎に角三分を待つのだ
カレーパン食べつつ句集読む聖夜
鴨がいる事態自体は鴨ではない
寒いけど寒いからなんにもできない
愛の言葉則ち別れ落葉焚
福笑い本当にやったーと言った
古きものとして生まれり冬ぬくし
象なれど月にしあれば高く跳ぶ
舗装路の落葉よ踏めばふわふわす
怖いもの見たさの過去を覗きけり
篭の鳥は幸せだろう春の雷
陽当りの良い部屋に住み日向ぼこ
亀鳴いてみろ眠るのに良い時間
つかまえたつもりだったけど貝寄
梟の同じ不幸を病気かな
菊買いておじさん少し嬉しそう
雨寂しすぎるから静かにしておいで
毛糸玉階下の人が笑っている
顔腫らしおいて水母になりたがる
冬が来ることさえ信じてはだめだ
木の葉髪美し木のようにしにたし
行きすぎた後もまだある麦畑
海鼠いつか終るなら全部間違い
檸檬佇むよ誰にも見られずに
べつにアタリを期待していないけどハズレ
そっと去る檸檬をアップロードして
友達になれないままの雁帰る
秋の川他人としての君の写真
恋人は他人に生命は銀河に
稲車命断つのに力要る
もう君は私が怖くない豊年
雪迎さよならすれば透明に
ぶらんこの母のメランコリー寛解
林檎ならいいよ私に混ざっても
栗羊羹多めにお湯を沸かす夫
コアラのマーチの絵が皆幸せそうで辛い
メール来るとき鯊のこと忘れている
猫の恋慰める係になりぬ
鯊の如眠りゴミ出しを忘れる
恋猫の為の仏典全百巻
風船葛いつかもらったことのある
椎茸のような暮しや寝て起きて
何も欲しくないのよ秋の名残すら
社会的小学生の櫟の実
柚子風呂やふやければ死に近くなる
凡て夏は詐欺なりやっと気付きけり
恋すれば老人の如秋蛍
棒針を太腿に乗せ話中
皆ひとを好きで苦しい冬薔薇
未だ痛む恋だった物竃猫
新幹線秋の日本を縦横に
スプーンのつもりがフォーク雪風巻く
明日という夢幻や薄原
昨日ちう空想上の梅桃
原爆忌のおはなしきけばおねしょ増える
浮寝鳥勇者は剣を奪われて
故郷にもカレー屋のあり文化の日
落葉集めれば匂うや坂の町
紅葉かつ散る優しさはみんな過去