幸せは取りに戻れず鳥帰る
生活の窓破られて鳥帰る
梅雨菌胞子キラキラ町は揺れ
鶯の声が輪郭持ち小雨
末代の子の走り去る梅雨の街
蝿生まる又人生まる悲しさよ
涼風や死際すべて安らかなれ
秋灯ゲームの爆発音聞こえ
春愁や水面の陰として揺れる
陽炎とそれで思ったこと全部
桜餅寝言でふふと笑うひと
いつか我が火葬される日桜の葉
花曇知らない場所へ向かっている
旱天や太古の海の蛋白質
眼鏡越し車窓越しなる花曇
口開いたままのパペット青嵐
もぞもぞと夫動くや寒の朝
雨蛙性善説の鬱病者
原始から呪い継がれて蝶生まる
病蛍小さき悪意の集まりて
小悪党集いて師走大事件
青虫の踏まれるまでを懸命に
雛菊の丘を這いゆく弱き者
寒卵弱者は遠に見捨てられ
寒茜生まれたことが運の尽き
当てもなき日の為かぶら犠牲にす
門の樹の移り変わりて紅葉す
大根引く一瞬星の重さ引く
運ばれて蟻の獲物の眠る如
脚冷ゆる頃と思いぬ触れられて
人走り続ける秋桜咲き続ける
竜田姫痛くて白い石の床
サンドレス着ている君の走る走る
怪獣もロボットも噴水を見て
星走る君の瞼を何度も見る
ふらここに揺れて紅茶を飲めるカフェ
高台に案山子普通の顔をして
岩ありて座すどうぶつもででむしも
あめんぼの我を知りたる如く逃げ
火取虫電気の火にも来ていたり
亀鳴いて垂れたる糸を齧りけり
真っ直ぐな川にも来る山女かな
新しき島や池には蝌蚪もいて
ほうたるの無限に湧ける島に来ぬ
今日までの春の惜しさや写真撮る
今日からは夏や魚も虫も吾も
夏来るポケットに春残すまま
言葉持たぬものになりたし火恋し
麦の芽と蛸の形の宇宙人
近付けば消え本物の水仙花
宇宙にはつき一月のそれを見る
二日待ち二日待たせる笹子かな