かつて爆発的に流行しその後も子供達に人気の、小さな卵形のフォルムの育成ゲーム。20XX年、そのゲームを真似た偽物「にんちっち」が発売された。認知症のお年寄りと過ごすゲームだ。これが子供から大人までひそかな人気を博している。
最初は認知症の診断書が画面でピコピコ揺れている。しばらくすると画面に初期形態のキャラクターが現れる。これを育てていく。
育ち具合によりミニゲームや食べ物が変わっていく。発症初期は徘徊するにんちっちを探すミニゲーム。症状が進んで家から出る行動力がなくなると機能低下防止のボール遊び。更に進めば身体の硬化防止のために手足を伸ばしてあげるミニゲームとなる。食べ物は最初は固形物。だんだんと刻み食、流動食と変えていく。嚥下もしにくくなっていくので水分にもとろみを付ける。
おむつ交換も適宜していく。ご飯を食べたばかりなのにすぐにまた欲しがるときなどは「なだめる」を選択する。
キャラクターの見た目は数段階の変化がある。呼び出し音や笑い方怒り方も様々だ。
各回のプレイで、また育成段階で、キャラクターとの出会いは一期一会だ。その時のキャラクターにはその時しか出会えない。にんちっちで遊ぶ者たちは画面を写真に撮って度々愛おしく見返すという。キャラクターの笑顔が、またはおそらく笑顔であろう表情が垣間見えたときが最高に嬉しいとプレイヤー達は言う。にんちっちは彼らの生活の大きな癒やしになっているようである。