2019-01-01から1年間の記事一覧

【短歌】2018年8月28日~2019年11月28日

僕達の心に君はたくさんの反実仮想残して死せりこのまちのドレスコードは一枚の葉っぱを肩に乗せていること歌一つ書き残せずに死んでいく私の死には意味はあるのかどこまでも続く砂浜どこまでも走り続ける蟹の永遠服にしわつけて故郷に帰るべく長距離バスに…

【俳句】2018年3月30日~2019年11月28日

年賀状赤子現れ猫消えて冬支度まちの全部が滲んでいる晩秋の地上の永い微睡みよ鰯らは皆重力を腹で指し退屈な夏の初日のスーパーよ優しさを欲せば夏の終かな編み針の冷たき梅雨を独りずつ涼風や遠い昔はエキゾチック雲丹の火に染めたい仮面神の塔蝶ひとの肩…

【小説】生きているのと同じだ

「もしタイムマシンがあったら、おばあちゃんが生きてたころに戻るのにな」 「君はおばあちゃんっ子だもんね」 「だって、そしたら死んでないのと同じじゃない?その時間に行けば、生きてたときのおばあちゃんがいるんだよ」 「そうかも。でも、てことは、タ…

【小説】呼吸

社長がくれた黒い小さな箱に入っていたのは卵だった。 箱の中は卵が揺れて割れないように卵に沿うように丸くなっていた。 卵はほんのり暖かかった。茹でたてのゆで卵か。それを箱に入れてくれるというのも奇妙なものだ。社長がどんな人なのかまだわからない…

【小説】趣味の話

「趣味は何をなさっているんですか」 「映画鑑賞です。午後から毎日三本ほど見て。午前は評論を書いています」 「私はバンドを組んでまして。サードアルバムのレコ発ツアーで全国回り終えたところです」 「僕は化学が好きでして。毎日早朝から日付が変わるま…

【小説】感謝が出来ない人

地球から転任して参りました。分からないことだらけですので色々とご教授ください。本日からよろしくお願いします。 頭を上げると貼り紙が目に入った。 心に安らぎをもたらす今月の言葉、感謝の気持ちを示せないような人を大事にしなくていいんだよ。 そして…

【小説】機械の余生

取り込んだ燃料をエネルギーに変える。出来たエネルギーと、その為に使われたエネルギーと、どちらが大きいのかもう分からない。我々はかつて動く為に補給し、人の役に立っていたはずだった。自動機械のみなさん、おはようございます。今日も健康を保つため…

【小説】惑星K最高の音楽家

我々の住む惑星Kではーー無論、他の星でもそうであろうがーー音楽は、スポーツの応援のために存在する。 この星で私は生まれ、音楽家を志すようになった。父の影響である。父は趣味で音楽をやっていた。 彼はテレビでスポーツの試合を点けて、クラリネットを…

【小説】逃がさない講座

起業講座、第三回の今日は、会員を退会させないテクニックについてお話します。 これはよく行われている方法なので皆さまご存知かもしれませんが、入会はできる限り簡単に出来るように、退会するのはなるべく面倒なシステムにする。こういうことです。皆さま…