2017-08-01から1ヶ月間の記事一覧

【小説】擬人化恋愛感情たん

うちがいるとご主人が苦しむってこと、わかってるんです。ご主人は好きになった男の人たちに、狂ってる、怖いてゆわれたはります。でもほんまに狂ってるんはうちやと思います。ご主人は恋して辛いとき、体力もなくて肌もぼろぼろやけど、恋の一瞬の幻想に舞…

【小説】楠本教授と水無月カンナ

楠本教授は、変わった学生に慕われることで学内で少し有名であった。個性的すぎる性格で周りとうまくやっていけなかった学生が、教授の元で才能を開花させたという話がたくさんあった。教授自身はなぜ彼らに慕われるのかわからなかったが、自分に寄ってきた…

【小説】会いにくる

娘とこれからも仲良くやっていく為には、少しだけ距離をおく必要がある。別れた夫の元で暮らす娘は毎日会いにくる。学校の行き帰りに一日二度寄っていくこともあれば、泊まっていくこともしばしばだ。子が母を慕って会いにくるのは当然のことではある。しか…

【小説】続々・マイクロバイオーム

菌たちと喧嘩した。その結果がこれ、便秘である。部屋の外で受けるストレスで俺はまた食生活が乱れていた。粉っぽいお菓子をろくに噛みもせず消化器官に放り込んだり昼夜と無く延々手持ちぶさたを埋めるように何か食べ続けたりした。もちろん彼女らは文句を…

【小説】望んだ者二人の話

ここに一つの望みがある。そしてその望みを望んでいた者が二人居る。ある者への恋の成就という望みである。一人は死んでいて一人は生きている。すなわち一つの物語はバッドエンドを迎え一つの物語は途中で忘れ去られた。森に隣接する墓である。二人はそこに…

【小説】回るおもちゃとの暮らし

寂しかった。誰も私を愛してくれない。一緒にいて楽しいと思ってもらえない。そして何より、愛されたい、必要とされたい、などと思ってしまうのが困ったことだった。そんな不穏な精神と戦う武器、あるいは寂しさを紛らわせてくれるペット、あるいは単純だけ…

【小説】独り

書く労力ですか。別に苦労して書いているわけじゃありません。自然に出てくるんです。書かずにはいられない。休日に遊びに出ることやお酒を飲むこと、趣味の旅行なんかを、皆さん苦労してされているわけではないですよね。それと同じです。だからもちろん書…

【小説】会いにいく

両親が離婚して私は父と暮らし始めた。それが一年前である。私は母に会いにいっていた。多いときは毎週。少なくて三週間に一度。母は私を迎えてくれた。そしていつも忙しくしていた。彼女は仕事が好きである。そしておそらく、社会に必要とされている人間で…

【小説】続・マイクロバイオーム

【小説】マイクロバイオーム - 惹句と豆喰い ↑ここからの続き。 そして俺と菌たちの生活が始まった。俺はもう独りではなかった。この部屋は自分一人の世界ではなく俺と菌たちの世界になった。いつしか俺は部屋の外へ、家の外へ出られるようになっていた。他…