2021-01-01から1年間の記事一覧

【小説】いつも人は一日で消える

恋愛成就で有名なまじない師の所へ行った。同じ職場の片想いの人の写真を見せると、まじない師は言った。 「この男性が貴女を好きになるようにまじないをかけました。ついでにデートの約束も取り付けました。今週の土曜日の13時に駅前の公園へ行きなさい」 …

【小説】脱出

敵が現れた夜、私と彼はいつものようにヒーロースーツに身を包み、戦っていた。やはり私達は最高のコンビだった。一人目の敵を見事な連携プレーで倒した後、彼は振り返り私に微笑みかけた。彼の頭を後ろから二人目の敵が狙っていた。私は素早く踏み込み、パ…

【小説】支配

夜、私達はヒーローをしている。敵が現れれば私と彼は抜群の気があった連携で敵を圧倒する。仕事が終われば私達はハイタッチをして喜びあい労いあい、彼は私をハグしてキスをしてくれる。 昼、私達はスクールに通っている。昨日はお疲れ様、ありがとう、あの…

【小説】忘れる

R星に赴いていた我が研究所の調査員が帰って来なくなった。彼女を探しに人をやった。彼女が宿泊していたホテルにあった多くの忘れ物の中に病院の領収書があった。この星には、他の星から来た者がこの星の者と同じ感覚で暮らせるように脳の記憶に関する部分…

【小説】憶えている

調査に入ったその星の住民は思い出というものを持たなかった。目の前で続いているタスクのことはそれが終わるまで覚えている。しかし終わると完全に忘れてしまう。仕事でも生活でも対人関係でも何に関してもそうだった。我々には奇妙に思えるが、彼らにはそ…

【小説】ヒトに恋したマモノ

おいで、とその人は言った。それに逆らうことはできなかった。どうせ後で悲しむ。度重なる過去の経験は警告していた。でもそれらも役割を果たさなかった。求めてやまなかった。もう遅かった。その人の元に走った。体が壊れるくらいにはやく。その人はいなか…

【小説】山を下りたマモノ

山を下りて街に出た。通り沿いにある台の上に座る。目の前を人々が行き交う。 私は待った。ここを通る人の誰かが私に気付き、私に話しかけてくれるのを。もしかしたら、抱き締めてくれるのを。連れて帰ってくれるのを。 長い時間が過ぎたように感じられた。…

【小説】VS説教おじさん

風俗嬢が仕事に行こうとすると、説教おじさんが現れた。説教おじさんは説教を始めた。 風俗嬢は抵抗した。 「家に帰れって言われたって実家じゃお金も食べ物ももらえないんですよ、出勤させてください」 「まともな仕事をしろですか?二百社受けましたが百社…

【小説】まものの子の独白

狩りができるひとたちはみんな本当にすごいと思う。尊敬する。狩りは難しいし大変だ。気持ちも体も大変疲れる。ぼくは狩りに成功したことがないから本当には分からないけれど、しようとしただけでもくたくたで動けなくなってしまうからきっとそうだと思う。…

【小説】まものの子の話

昔あるところにまものの親子がいました。 まものの子は狩りが上手くできませんでした。どんなに息を潜めて近づいてもすぐに獲物に気付かれてしまうし、追いかけっこになるとたちまち距離を離されてしまいます。まものの子は小さな頃から一度も獲物を捕まえる…