【小説】冬の一日

一月の花粉症に関する情報を得るためにレジのおばさんに話しかけた。
鼻水と涙が出る、とおばさんは私の一人前に並んでいた知り合いらしき人と話していたので花粉症かと思ってそう聞いたら「風邪です」と言われた。
行きつけではあるが顔見知りでもないレジのおばさんに話しかけるなどというそこそこ大それたことをしてしまうくらいに得たかった花粉症に関する情報は得られず、なんかちょっと気まずいかんじになった。と私は思った。
最近自分や周りを襲っている突然の鼻や喉の痛みがよくあることだと知って、最近多いからね、となんとなく孤独な戦いから解放されることを望んでいた。
なんか急に話しかけてきたやつとしておばさんが私をうろ覚えてしまえば、モヤシと舞茸ばかり買っていく女という認識を持たれるのも時間の問題だろう。
軽々しく話しかけてしまったが思いがけず恥ずかしくなってきた。

買った商品をレジ袋に積めて帰ろうとすると五歳くらいの男の子が妹らしき一歳くらいの女の子の背中で床の拭き掃除をしていた。あんまりだったので注意した。彼らは全く反応を示さず床掃除を続けて行った。
聞こえなかったのだな。もう少し大きな声で言うべきだった。否、ちゃんと呼びかけてこちらを向かせてから…注意するときのかっこいい台詞はこれ、否こっちかな、と考えながら帰った。もちろん再び声をかけたりはしない。私はいつだってコミュニケーションにおける諦めは誰よりも早いのだ。

座っていると背中がどんどん丸まるので散歩をしようか、目的地もないし家でインスタントのスープでも飲もうか、結局家にいることにした。換気をしようと思ったのだ。しかし私の鼻炎がハウスダストによるものならば換気は有効だが、花粉によるものだとすれば逆効果だ。