【小説】理想郷物語

南半球のとある小さな島に、珍しい生態系が存在した。
ヒトから枝分かれしたその生き物は、ヒトの子供並みの知能と体力しか持たなかった。しかしその島は外敵が少なく、淘汰されず生き残った。
その生き物の寿命は十二年ほど。細胞数はヒト並みだが、分裂で増える。性別は無い。性質はおとなしく、謙遜と馴れ合いを常とした。
島は暖かく、住居や服は必要ない。また、彼らは気温等の一定の条件下で光合成を行った。島の環境はそれにも適していた。エネルギーはそれでまかなえるので、彼らは食物を摂取しない。
なので彼らは生存のために何かをする必要が無く、ひたすら静かに遊び暮らした。
姿はヒトの女児に似ていた。荷物を運ぶのに、赤い箱形の背負い鞄が用いられた。
彼らは島の環境のわずかな変化で、絶滅してしまったと言われている。