【小説】交流を図る

虫歯を抜いた方がいいと烏が言っていた。なので、烏のところを訪ねて抜いてくださいと頼んだ。烏は、
「え?今すぐ必ずってわけじゃなかったんだけど。まあいいや」
と言った。私はまた勘違いしてしまったと思ったが、撤回するのも余計に気まずいので、抜いてもらった。

髪を全て売ってしまった方が得をすると台湾栗鼠が言った。なので栗鼠のところを訪ねて刈ってくださいと頼んだ。栗鼠は
「え?冗談だったんだけど、そんなに刈ってほしいなら」
と言った。撤回するのも気まずいので、刈ってもらった。

どうしても眼球が必要なのだと鳩が言った。鳩のところを訪ねて差し上げますと言った。鳩は
「あ、え?ああ、ありがとう」
と言った。そして
(君のは要らないんだけどな)
と小さく呟いた。
帰る言い訳も思い付かないので、抜いてもらった。

君は明日死ぬことになっているので私のところへ来なさいと猫が言った。なので猫のところを訪ねた。猫は
「人を死なすなんて気乗りしないのだけれど、君が望むなら仕方ないな」
と言った。私はまた勘違いしてしまったと思ったが、撤回できる雰囲気でもなかったので、殺された。