【小説】日々

彼は水星の裏庭に住んでいる。そこそこ近い。金星の三番地に共通に行ったことのある店がある。ツノの後ろが痛むときの対処法などを教えてくれた。毎時通信蝙蝠を放ってくれる。私は寂しくない。
でも寂しいときもある。黄砂の粒子が大きすぎて時間が止まるときとか。そのときはステゴザウルスの脈動と舌を出す回数を数えて長い髪をそれに編み込んでいく。
そうすればそれらに押されて空は流れる。寂しくなくはならないが、待つしかない。そんなとき、全ての回転するペットボトルも虚しく見える。皆、元気な振りをしているだけだ。どうしてわざわざ?
万年羊の作り方を見ながら足の指の柔軟体操をする。へそから子宮経由で消化器官を通し、鼻から出して結ぶ。気だるくてその格好のまま眠ってしまう。
起きたら夕方になっていてまたツノの後ろが痛む。まだ時間は元に戻っていない。あと五百年くらい待てばいいだろう。指についた細菌を払いながら思った。