窓よぎるニ三片こそ花と思う
人間も樹木も他人花見酒
花疲れするため向う河原かな
嬉しくて寂しい夫の居ぬ夜長
春灯受けて探偵帰還せり
青嵐ミリオンバンブー傾かす
水草の花風に揺れ吾散りぬ
蠅潰せば血今日死ねるはずだった
夏の夜の色した窓の夕餉かな
人眠る横を走るや盛猫
死にたいとぼんやり思う花火かな
紫陽花の花瓶の水を藻掻く虫
青嵐世界のここにいて怖い
四葩真っ青頓服飲んで部屋に一人
大輪の四葩と病んだ私だけ
銀盃草君に会いたいから死なない
銀盃草君に殉じて生きるとする
午睡の君に父の自慢す君が好き
紫陽花とその他でいっぱいのタッパー
昼寝だけしに会いに行く君が好き
夜長し心で君に会いに行く
君が為まだ死なずいる夜長かな
四葩枯る愛に溢れた世界の中
愛鳥週間独りが平気な男ばかり
スカートが波打つ扇風機に吹かれ
わからない夜わからない虫の声
頓服が溶けない胃なる夜長し
デスボイス小さく小さくかける夜長
今飲めば吐くだろうなあ夏憂い
あの娘とか偉い人とか風死して
楽しくてすぐ鬱々として半夏
掃除機の排気口から風涼し
耳鳴か否蝉の声かもしれない
二の腕を服で隠すや夏痩せて
ドップラー効果の車両のちに蝉
窓全部開け夜風の涼し夫の留守
透き通る水をエアプランツ泳ぐ
蝉落ちていてどこまでも死の季節
窓開けて涼し生きていて哀し
さかさまの海一月に貼り付いて
逆さまの海を残して一月去る
未遂後の秋が来てそこはかとなし
蟋蟀や痒さの首は幻影肢
秋寒し唱歌を歌う道行く子
良く生きよ窓から放つ冬の蜂
座っても寝ても過ぎ行く冬を観る