【俳句】2024年4月〜12月

窓よぎるニ三片こそ花と思う

人間も樹木も他人花見酒

花疲れするため向う河原かな

嬉しくて寂しい夫の居ぬ夜長

春灯受けて探偵帰還せり

青嵐ミリオンバンブー傾かす

水草の花風に揺れ吾散りぬ

蠅潰せば血今日死ねるはずだった

夏の夜の色した窓の夕餉かな

人眠る横を走るや盛猫

死にたいとぼんやり思う花火かな

紫陽花の花瓶の水を藻掻く虫

青嵐世界のここにいて怖い

四葩真っ青頓服飲んで部屋に一人

大輪の四葩と病んだ私だけ

銀盃草君に会いたいから死なない

銀盃草君に殉じて生きるとする

午睡の君に父の自慢す君が好き

紫陽花とその他でいっぱいのタッパー

昼寝だけしに会いに行く君が好き

夜長し心で君に会いに行く

君が為まだ死なずいる夜長かな

四葩枯る愛に溢れた世界の中

愛鳥週間独りが平気な男ばかり

スカートが波打つ扇風機に吹かれ

わからない夜わからない虫の声

頓服が溶けない胃なる夜長し

デスボイス小さく小さくかける夜長

今飲めば吐くだろうなあ夏憂い

あの娘とか偉い人とか風死して

楽しくてすぐ鬱々として半夏

掃除機の排気口から風涼し

耳鳴か否蝉の声かもしれない

二の腕を服で隠すや夏痩せて

ドップラー効果の車両のちに蝉

窓全部開け夜風の涼し夫の留守

透き通る水をエアプランツ泳ぐ

蝉落ちていてどこまでも死の季節

窓開けて涼し生きていて哀し

さかさまの海一月に貼り付いて

逆さまの海を残して一月去る

未遂後の秋が来てそこはかとなし

蟋蟀や痒さの首は幻影肢

秋寒し唱歌を歌う道行く子

良く生きよ窓から放つ冬の蜂

座っても寝ても過ぎ行く冬を観る