「セケン」はフィールドでなく村に現れる敵である。始まりの村からもう居る。出会えば逃げるコマンドは出ない。道行く人や店の人に話しかけるとたまにそれが「セケン」であるという形で現れる。「いつまでも冒険者などしていないでまともな職に就きなさい」などと言ってくる。次に話しかけたときはだいたいまた普通にヒントをくれたり物を売ってくれたりする。

【俳句】2019年11月28日~2021年末

幸せは取りに戻れず鳥帰る
生活の窓破られて鳥帰る
梅雨菌胞子キラキラ町は揺れ
鶯の声が輪郭持ち小雨
末代の子の走り去る梅雨の街
蝿生まる又人生まる悲しさよ
涼風や死際すべて安らかなれ
秋灯ゲームの爆発音聞こえ
春愁や水面の陰として揺れる
陽炎とそれで思ったこと全部
桜餅寝言でふふと笑うひと
いつか我が火葬される日桜の葉
花曇知らない場所へ向かっている
旱天や太古の海の蛋白質
眼鏡越し車窓越しなる花曇
口開いたままのパペット青嵐
もぞもぞと夫動くや寒の朝
雨蛙性善説鬱病
原始から呪い継がれて蝶生まる
病蛍小さき悪意の集まりて
小悪党集いて師走大事件
青虫の踏まれるまでを懸命に
雛菊の丘を這いゆく弱き者
寒卵弱者は遠に見捨てられ
寒茜生まれたことが運の尽き
当てもなき日の為かぶら犠牲にす
門の樹の移り変わりて紅葉す
大根引く一瞬星の重さ引く
運ばれて蟻の獲物の眠る如
脚冷ゆる頃と思いぬ触れられて
人走り続ける秋桜咲き続ける
竜田姫痛くて白い石の床
サンドレス着ている君の走る走る
怪獣もロボットも噴水を見て
星走る君の瞼を何度も見る
ふらここに揺れて紅茶を飲めるカフェ
高台に案山子普通の顔をして
岩ありて座すどうぶつもででむしも
あめんぼの我を知りたる如く逃げ
火取虫電気の火にも来ていたり
亀鳴いて垂れたる糸を齧りけり
真っ直ぐな川にも来る山女かな
新しき島や池には蝌蚪もいて
ほうたるの無限に湧ける島に来ぬ
今日までの春の惜しさや写真撮る
今日からは夏や魚も虫も吾も
夏来るポケットに春残すまま
言葉持たぬものになりたし火恋し
麦の芽と蛸の形の宇宙人
近付けば消え本物の水仙
宇宙にはつき一月のそれを見る
二日待ち二日待たせる笹子かな

【短歌】2019年11月28日~2021年末

童顔の女困った顔ぼくは泣き顔土に擦りつけてる
洗濯の皺のばすよう手を叩きあまねく人を消してしまおう
捨てないで見放さないでお母さま僕は彼女の靴にすがった
あかねさすあの日の君はもういない同じ顔した抜殻がある
朽果てた首吊り死体その部屋に付けっぱなしのラジオ流れる
生活や埃と髭と鳥の糞かき分けながら布団這い出る
愛用の鞄と本と体詰め棺桶燃やし送り出したる
我に似て我より心美しきアカウントあり見れば死すべし
優しくて守ってくれる想像の存在呼んでみるおかあさん
想像の中にだけ居て絶対で優しいものを母と呼びけり
悪夢さえ虚無さえ懐かしい朝だ私この世の物質だった
扉越しゲームの中の戦争の爆音怒声避けて本読む
美しい飛込みののち銀色の土竜は世界の裏を泳ぎつ
ろくなことなかった私老いた君どちらも過去を思い出さない
大鍋を掻き回す魔女唱えたる呪文無限にケルト音楽
勇敢な人なる君はわが腹に自傷のような歯型を残す
あの頃の救えなかった友人と私自身に墓を建てたる
暖冬の大寒と言うミドルらは幸せそうな頬をしている
会える日の数が決まっているのなら会わずにずっととっておきたい
時間です貴方のいない日常に帰りたくない殺してください
嫌な子の自分が嫌になったから私あなたを嫌いになった
嬉しいと悲しくなるの嬉しいは偶にしかない特別だから
もし君が僕を嫌いになったならもう嫌われる怖さはないのに
会えぬのも会うのも辛い背中には冷たい汗がこびりついてる
君がそうして優しい言葉を吐く毎に私は私に裏切られるの
泣いた時びっくりしたり呆れたり嘲る奴らから逃げ続ける
お互いに楽しい振りをし続ける必要がある生なら終れ
苦しんでいる狂人の不気味さを言う人がいて幾らでもいて
狂人は苦しい時はバスに乗る泣いても皆無視してくれる
二の腕の温度直接もぎ取っていく冷房の真下で朽ちる
暑いのも寒いのもまた五月蝿いのも金が無ければ堪えるしかない
あの人にも誰にも会わず眠れたら起きることなく眠れたらいい
わたくしをわたくしだけが救い得る眠るふりして爪をたててる
難しい願いを持ったつもりは無いただ永遠に眠りたいだけ
信仰を忘れたように心身が私に戻り一人になった
不合理はゴツゴツしてる幽霊になって防御を完璧にする
甘えられる誰かを探しに行かないと知らないうちに首輪は朽ちて
いい子ねと自分に云って重く厚い世界を脱いで眠っていいよ
古の歌人も贈る恋歌の気障さに後で照れただろうか
逃げ出してパンデミックの地球からそして誰かと会話がしたい
人恋しく飢えて手を出す関係が毒と知りつつ食べ続けてる
お洒落するだけで疲れる装備すればHP減る刃のようだ
退屈は人を蝕む恍惚の父は冷蔵庫をまた開けて
足元に溜まった汗に溶けだした脳細胞に虫が群がる

【小説】いつも人は一日で消える

恋愛成就で有名なまじない師の所へ行った。同じ職場の片想いの人の写真を見せると、まじない師は言った。

「この男性が貴女を好きになるようにまじないをかけました。ついでにデートの約束も取り付けました。今週の土曜日の13時に駅前の公園へ行きなさい」

私は言う通り公園へ行った。まだ半信半疑だったがそこには片想いの…否、片想いだった彼が待っていた。彼は私の服を褒めた。一日たっぷりデートを楽しんだ。彼も楽しそうにはしゃいでいた。帰り際、彼は、これからもずっとそばにいてほしいと言った。

人の心はこんなにも舞い上がることがあるものなのか。嬉しくて嬉しくて眠れなかった。

翌日、彼にメッセージを送った。昨日はありがとう、楽しかったと。なぜか返信が来ない。端末の具合が悪いのだろうか?

週明け、朝、職場で彼に挨拶する。おはようございますと返す彼は素っ気なかった。照れているのだろうか。

昼休み、人目の無いのを見計らって彼に話しかけた。今度いつデートできるかな。彼は怪訝な顔をし、何かもごもご言い繕って去っていった。職場で話しかけられるのは嫌なのだろうか。でも大丈夫。先日の優しい彼を思い出せば。彼は私のことをとても想ってくれている。安心していい。

その状態が数週間続いた。彼が私をちゃんと好きなのはわかっていた。それでもしびれを切らした私は彼のデスクの引き出しにこっそりメモを挟んだ。また土曜日にあの公園で待ってます。

土曜日、私は待った。彼はいつまでたっても来なかった。

翌週、職場では私がストーカーであると噂がたっていた。

さすがにおかしいと思ってまじない師を問い詰めた。すると白状した。自分は彼にまじないをかけたのではない。彼にそっくりで貴女を好きな、一日だけ動く木偶人形を作ったのだと。その人形を公園に向かわせた。まじない師はそう言った。

私はその場にくずおれた。彼は私を好きではなかった。誰も私を好きではなかった。嘘の時間に、私は喜んで、振り回されて、一人で踊っていた。私が信じていた「現実」はどこへ行ったのか。私の想いはどこへ行けばいいのか。

【小説】脱出

敵が現れた夜、私と彼はいつものようにヒーロースーツに身を包み、戦っていた。やはり私達は最高のコンビだった。一人目の敵を見事な連携プレーで倒した後、彼は振り返り私に微笑みかけた。彼の頭を後ろから二人目の敵が狙っていた。私は素早く踏み込み、パンチを、そう、パンチを彼の脇腹に命中させた。そして私は去った。夜からも昼からもヒーローからもスクールからも、彼からも。全てから去った。そして二度と戻らなかった。

【小説】支配

夜、私達はヒーローをしている。敵が現れれば私と彼は抜群の気があった連携で敵を圧倒する。仕事が終われば私達はハイタッチをして喜びあい労いあい、彼は私をハグしてキスをしてくれる。

昼、私達はスクールに通っている。昨日はお疲れ様、ありがとう、あの敵を仕留めたキック最高だった。私は彼にメッセージを送る。返ってはこない。既読もつかない。何日たっても何週間たっても。スクールで私はいじめられている。水浸しで廊下にへたりこんでいたら彼が見えた。こちらを指差して笑っている。

敵が出た夜、私達はまたヒーローをやる。彼は優しく頼れて、彼も私を信頼している。私達は二人でお互い弱みをカバーし強みを何倍にもできる最高のコンビだ。戦いが終わると彼はまた私を抱きしめる。

私は彼が好きだ。愛している。昼も夜もいつも彼を想う。彼のことを考えれば涙が出て呼吸が速くなりお腹が痛くなって吐き気がする。