【短歌】2019年11月28日~2021年末

童顔の女困った顔ぼくは泣き顔土に擦りつけてる
洗濯の皺のばすよう手を叩きあまねく人を消してしまおう
捨てないで見放さないでお母さま僕は彼女の靴にすがった
あかねさすあの日の君はもういない同じ顔した抜殻がある
朽果てた首吊り死体その部屋に付けっぱなしのラジオ流れる
生活や埃と髭と鳥の糞かき分けながら布団這い出る
愛用の鞄と本と体詰め棺桶燃やし送り出したる
我に似て我より心美しきアカウントあり見れば死すべし
優しくて守ってくれる想像の存在呼んでみるおかあさん
想像の中にだけ居て絶対で優しいものを母と呼びけり
悪夢さえ虚無さえ懐かしい朝だ私この世の物質だった
扉越しゲームの中の戦争の爆音怒声避けて本読む
美しい飛込みののち銀色の土竜は世界の裏を泳ぎつ
ろくなことなかった私老いた君どちらも過去を思い出さない
大鍋を掻き回す魔女唱えたる呪文無限にケルト音楽
勇敢な人なる君はわが腹に自傷のような歯型を残す
あの頃の救えなかった友人と私自身に墓を建てたる
暖冬の大寒と言うミドルらは幸せそうな頬をしている
会える日の数が決まっているのなら会わずにずっととっておきたい
時間です貴方のいない日常に帰りたくない殺してください
嫌な子の自分が嫌になったから私あなたを嫌いになった
嬉しいと悲しくなるの嬉しいは偶にしかない特別だから
もし君が僕を嫌いになったならもう嫌われる怖さはないのに
会えぬのも会うのも辛い背中には冷たい汗がこびりついてる
君がそうして優しい言葉を吐く毎に私は私に裏切られるの
泣いた時びっくりしたり呆れたり嘲る奴らから逃げ続ける
お互いに楽しい振りをし続ける必要がある生なら終れ
苦しんでいる狂人の不気味さを言う人がいて幾らでもいて
狂人は苦しい時はバスに乗る泣いても皆無視してくれる
二の腕の温度直接もぎ取っていく冷房の真下で朽ちる
暑いのも寒いのもまた五月蝿いのも金が無ければ堪えるしかない
あの人にも誰にも会わず眠れたら起きることなく眠れたらいい
わたくしをわたくしだけが救い得る眠るふりして爪をたててる
難しい願いを持ったつもりは無いただ永遠に眠りたいだけ
信仰を忘れたように心身が私に戻り一人になった
不合理はゴツゴツしてる幽霊になって防御を完璧にする
甘えられる誰かを探しに行かないと知らないうちに首輪は朽ちて
いい子ねと自分に云って重く厚い世界を脱いで眠っていいよ
古の歌人も贈る恋歌の気障さに後で照れただろうか
逃げ出してパンデミックの地球からそして誰かと会話がしたい
人恋しく飢えて手を出す関係が毒と知りつつ食べ続けてる
お洒落するだけで疲れる装備すればHP減る刃のようだ
退屈は人を蝕む恍惚の父は冷蔵庫をまた開けて
足元に溜まった汗に溶けだした脳細胞に虫が群がる