【小説】差別の無い未来

倫理的な向上の過程は、直感を論理が、感情を理性が制していく過程である。

”場にそぐわないカテゴライズ”がかつて、差別や嫌がらせ、プロトタイプ的思考を生み出していた。

 

人類が陥り、やがて克服したものの一つに夏生まれ差別がある。

かつてあった、場にそぐわないカテゴライズによる不適切な発言。それは例えば、

「まだその仕事できてないの? これだから夏生まれは」

などである。今それ全然関係なくない?というところで出してしまうカテゴライズ。それが、場にそぐわないカテゴライズだ。そのカテゴリーの人にしか言わない言葉、

「暑いの平気でしょ」「夏休みに誕生日っていいなぁ」

等も夏生まれへの嫌がらせ的発言とされる。

同僚がどの季節に生まれたのかなど、もし知っていても今なら普段は意識に上らないのが普通だろう。

 

また他に、かつて未熟で問題とされて今は発達したものに性的モラルがある。性別に関する場にそぐわないカテゴライズも撲滅された。

すなわち、必要な場合以外性別など意識に上らない。

犯人の詳しい特徴がわかっても、性別はわからないことが多い。目撃者が咄嗟に意識できないのである。

映画やバイキングレストランなどの女性割引はなくなった。

太った人が妊婦と間違われて席を譲られてしまうようなことも、男女とも同じように起こる。

社会進出する女性の数のデータなども無い。分けて数えることをしないからである。

 

斯くして人々は直感を克服したのだ。