この辺の川にはカワネコと呼ばれる生き物が生息している。エリマキトカゲが腹芸をしているような姿でちっとも可愛くないし時々人に向かってくるので害獣扱いされている。
先日、端末をうっかり川に落としてしまいYシャツとスラックスの裾をまくって不格好に探していた。後ろを何か通っていったと思ったらカワネコだった。何匹か集まっている。端末は無事見つかった。しばらくしてまたその辺りを通ったとき一匹のカワネコがよたよたと歩いてきた。どうやら着いてくるらしい。家まで来てしまったのでなんとなく飼ってみることにした。カワネコを飼育するなんて普通は研究者くらいだろう。
触ってみると、カワネコの頭部の骨は他の部分より少し硬い。そういえばこのカワネコが実はカッパなのだと言っていた子供がいたっけ。こいつのことはカッパと呼ぶことにした。
しばらくカッパと暮らした。しかしカワネコの寿命は短いらしい。生態を調べて餌をやっていたがすぐに弱ってきた。あるときいなくなったと思ったら川辺で倒れていた。一応連れて帰ったがもうほとんど動けなくなっていた。
少し前から頭を引っ掻いて傷を作るようになっていたので、ペット用の保護布を当ててやった。しかしもう引っ掻こうともせず、餌をやればゆっくりゆっくり口を動かす以外はじっとしている。ほとんど眠って過ごしているようだ。元気なころのカッパはこころなしか少し苛立って見えた。それが今はなんだかまるで悟ったように静かだ。腹芸みたいな顔がいつも微笑んでいるようにさえ見える。そうしてカッパは無限遠まで続くデクレッシェンドのように過ごし息をひきとった。