【小説】皿の絵

皿の絵になりたかった。

その時はまだ周りで死のうとした人がいなかったから、死にたいという発想は出てこなかった。

絶え間ない煮えるような痛みの中で走り続けていた。昼食に出てきた中華皿の縁にふと目が行った。昔の中国の子供が独楽で遊ぶ絵が書かれていた。皿の絵になりたい。吸い込まれるようにそう思った。

皿の絵には意識がないから、皿の絵になればこの苦しみが消える。しばらく切実に思いながら皿の絵を見ていた。

 

走るのは遠にやめた。なのにまだ生きている。

しばしばやってくる、何をしても埋まらないこの大いなる退屈は、皿の絵になれば消えるだろうか。