【俳句】2018年3月30日~2019年11月28日

年賀状赤子現れ猫消えて
冬支度まちの全部が滲んでいる
晩秋の地上の永い微睡みよ
鰯らは皆重力を腹で指し
退屈な夏の初日のスーパーよ
優しさを欲せば夏の終かな
編み針の冷たき梅雨を独りずつ
涼風や遠い昔はエキゾチック
雲丹の火に染めたい仮面神の塔
蝶ひとの肩に来ていて何もなし
ささやかな物欲を持ち夏に入る
蝶生まるほどの哀しき景色かな
蝶生まる昨日は生きていなかった
はんぶんこしても減らない日永かな
スポイトに吸わす泪の春の果
春の風邪ひいて時間の檻の中
落葉雨掻き分けてバス進みけり
介護者の真顔の写真桜まじ
もういない父に飼われていた金魚
頷きの過剰な聞き手花は葉に
左にも右にも躑躅ありて酔う
繕いて木の葉髪なお美しき
クリスマスイブの雑沓に踏み込む
羽ばたきに重きを背負い帰る鳥
話す人無く初冬の通過待ち
鯊全て悪いのに鯊笑いたる
蚊のごとき命飛びたり叩きけり
風邪ふたり居て寂しさの満たされず
鶏頭が有るまたは無い幸せよ
恋や皆アザミはドライフラワー
羽抜鳥羽のあるときより軽い
さよならの毎に近づくお花畑
皆外へ消えて目高の居ぬ視界
心身症夢の底では跳ねたがる
連雀は働かなくて良いと云う
遊園地の迷子でいっぱいの地球
ごみ屋敷に住まう男の端居かな
夏風邪をひきボロ切れのように寝る
向日葵や「折らないでください」と札
ハーブティー熱く厨の風涼し
空っぽに堪え冷房の中に居る
避暑の人と繋がる為の電力よ
坂道をトラック曲がる揺れる初夏