貴方の有り余る正のエネルギーと私の有り余る負のエネルギーはどちらも落ち着く先を求めるので稲光が天と地を繋ぐのです。
【小説】箱庭
【小説】理想郷物語
南半球のとある小さな島に、珍しい生態系が存在した。
ヒトから枝分かれしたその生き物は、ヒトの子供並みの知能と体力しか持たなかった。しかしその島は外敵が少なく、淘汰されず生き残った。
その生き物の寿命は十二年ほど。細胞数はヒト並みだが、分裂で増える。性別は無い。性質はおとなしく、謙遜と馴れ合いを常とした。
島は暖かく、住居や服は必要ない。また、彼らは気温等の一定の条件下で光合成を行った。島の環境はそれにも適していた。エネルギーはそれでまかなえるので、彼らは食物を摂取しない。
なので彼らは生存のために何かをする必要が無く、ひたすら静かに遊び暮らした。
姿はヒトの女児に似ていた。荷物を運ぶのに、赤い箱形の背負い鞄が用いられた。
彼らは島の環境のわずかな変化で、絶滅してしまったと言われている。
【小説】千手さまの創世譚
千手さまはその有り余るエネルギーで、本来の仕事、すなわち生業やお家のことやご自身のことを完璧以上にこなしていらっしゃいました。
まだ余るエネルギーは素晴らしい余暇の為に使われました。そして慈悲深いことに、その一部を使って、この宇宙を作ってくださったのでした。
【俳句】2018年1月23日~3月30日
かつてこの星に菜の花摘める女児
春来るパノラマ島の廃墟かな
真っ暗なところへ消えた引鶴よ
バスの屋根に乗せる架空の麦鶉
人の塵或は花粉積層す
春昼の地球に置いていかれたる
まだ生まれたくない子にも春来る
蝶生まる今日も天気がよく寂しい
風呂桶を黒く満たして髪洗う
学校を嫌いと言いし子の卒業
ミサンガの黒は死の色雲雀東風
仲間ほしくて飛ばしいる花粉かな
完全な雨の中なり三月来
三月を寝込んだ人の安否かな
化粧箱開けて手術に似る春陰
熊穴を出る千年の後想う
とこしえは無しやと怒る海豹よ
好きだったものの残骸烏貝
所在なく住処聞き合う雨水かな
鶯やそこそこ旨いエビピラフ
初音して未だ縫われぬ布の束
末の子を嫁に出す戸の椿かな
春ショール出しニヤニヤし戻しけり
菜の花の辛くないやつが食べたい
春浅き三階空を庭とする
一人汝はラーメンに海苔五枚乗せ
残雪のスライムほどのHP
春来る鱗はやわらかく壊れ
朝寒をみださぬように車輪過ぐ
布団から出るために要る片栗粉
ポクポクと糞するうぐいすが犯人
朝焼の色のクラシックな恐竜
梅に鶯バス運転手声無骨
溶けかけてプラスティックな雪である
雪白し土を含めばやや親し
七日目の雪優しさとして残る
動くものあれば命や冬館
終ること知ってる春のはじまりに
眩しさが増してパフエと冬の終り
冬は無言で諭してきて困る