かつてこの星に菜の花摘める女児
春来るパノラマ島の廃墟かな
真っ暗なところへ消えた引鶴よ
バスの屋根に乗せる架空の麦鶉
人の塵或は花粉積層す
春昼の地球に置いていかれたる
まだ生まれたくない子にも春来る
蝶生まる今日も天気がよく寂しい
風呂桶を黒く満たして髪洗う
学校を嫌いと言いし子の卒業
ミサンガの黒は死の色雲雀東風
仲間ほしくて飛ばしいる花粉かな
完全な雨の中なり三月来
三月を寝込んだ人の安否かな
化粧箱開けて手術に似る春陰
熊穴を出る千年の後想う
とこしえは無しやと怒る海豹よ
好きだったものの残骸烏貝
所在なく住処聞き合う雨水かな
鶯やそこそこ旨いエビピラフ
初音して未だ縫われぬ布の束
末の子を嫁に出す戸の椿かな
春ショール出しニヤニヤし戻しけり
菜の花の辛くないやつが食べたい
春浅き三階空を庭とする
一人汝はラーメンに海苔五枚乗せ
残雪のスライムほどのHP
春来る鱗はやわらかく壊れ
朝寒をみださぬように車輪過ぐ
布団から出るために要る片栗粉
ポクポクと糞するうぐいすが犯人
朝焼の色のクラシックな恐竜
梅に鶯バス運転手声無骨
溶けかけてプラスティックな雪である
雪白し土を含めばやや親し
七日目の雪優しさとして残る
動くものあれば命や冬館
終ること知ってる春のはじまりに
眩しさが増してパフエと冬の終り
冬は無言で諭してきて困る