【小説】へびぃ

宇宙からもたらされた新生物へびぃは瞬く間に地球で驚異的人気を博した。可愛いへびぃの姿が見られるへびぃ園が乱立し、それを見に行くだけで飽きたらない人たちが家庭でのへびぃの飼育を始めた。へびぃの寿命は二十五年ほど。最初の十年ほどがもっとも可愛いが、それを過ぎてもまた別の味がある。へびぃの飼育は、一般人に不可能ということはないが、時間もお金も膨大にかかり、始めればほぼそれに人生を費やすことになる。それでもへびぃを飼育する者はあとをたたず、百年ほどでほとんどすべての世帯が飼育するのが当たり前となった。一世帯当たりの飼育数には変動があり、六体、七体が当然だった時期もあるが、経済的影響や一体一体への目のかけ方に対する価値観などが変わり、今はピークを過ぎて減ってきている。
とは言え、驚異のへびぃブームはもう千年以上続いている。この人気が止まる気配は全くない。
 
最近の週刊誌にはこんな記事までが載っている。
 
へびぃを飼わない若者増加!
 理由トップ5
1、金銭的理由
2、人だけの生活を楽しみたい
3、気楽でいたい
4、世話が大変
5、野生の方が幸せ
 専門家の声
現在では価値観は多様化され、このような人たちがいることも考えられなくはありません。しかし、へびぃの可愛さを前に育てるという選択を簡単に捨ててしまう、そういう感性の人が増えているというのは、一つの時代の危機ではないでしょうか。これは社会が正常さを失っている合図です。それが若者の心に現れているのでしょう。
 
 
ところで、斯く言う私は極少数派のへびぃ不飼育主義者である。近々予定している飼育主義者へのインタビューの質問は以下の通りである。
 
・へびぃはへびぃ園をはじめ、町中に溢れている。なぜわざわざ飼うのか
・芸術やスポーツや食や様々な娯楽や人どおしの交流。夢中になれることはたくさんあるのに、なぜへびぃなのか
・へびぃを飼うのは難しい。苦痛を与えずに育てられると思ったのはなぜか
 
否、先の週刊誌のようにこう聞けばよい。
 
・なぜへびぃを飼うのか