【小説】マモノの寂しさ

ヒトの寂しさが沈む夕日だとすれば、マモノの寂しさは荒れ狂う暴風雨だ。傘が看板が植木鉢が宙を舞い、雨が頬を全身を裂かんばかりに右から左から殴り続ける。目を開けることも立っていることもできない。マモノは闇の中で体中から咆哮をあげる。地が轟く。誰もそれを聞くものはいない。マモノは藁にもすがる思いでヒトの言葉を呟く。「寂しい」と。それを聞いたヒトは一瞬優しい言葉でマモノを突き放し、日常に戻っていく。マモノは本当の闇に叩き落とされ、知る。これが絶望というものだと。