【小説】あるスライムの死

「どうして僕はこんな目に遭うの?どうして僕は生まれたの?誰が僕を生んだの?どうして日々は続くの?」

スライムは苦しかった。人間たちは毎日枝を振り回して怖い顔でスライムを叩く。仲間は居ない。声も出ない。泣くこともできない。自分で自分を抱きしめることも傷付けることもできない。

「ふぉっふぉっふぉ、苦戦しているようじゃのう」

フクロウがやってきて言った。

「辛いんです。もう消えたい」

スライムがそう念じるとフクロウは一振りの短剣を投げてよこした。

「ではお前にこれを授けよう」

フクロウは去っていった。スライムはその短剣を拾うことができなかった。手がないから。

日々は続いた。ある日、勇者と呼ばれる者がやってきた。勇者はスライムを一目見ると彼をぎゅっと抱きしめた。

「辛かったね。お疲れ様」

勇者はスライムを抱きしめたまま伝説の剣で彼の背中を刺した。スライムは泡のように消えた。こうして世界は救われた。