【小説】不幸の原因

僕は不幸だ。長く一緒に住んでいた恋人が浮気相手の子を身籠って出ていってしまったのである。僕は不幸の原因である彼女を恨み続けている。
 
私は不幸だ。遊びで付き合っていた人に妊娠させられて不本意な結婚をし、不本意な子育てをしている。私は夫を恨み続けている。
 
俺は不幸だ。お互い意識が低く望まない妊娠をしてしまったが、全部俺のせいにされた。こんな女だと思わなかった。仕方なく結婚したが、毎日不満ばかり聞かされる。俺は妻を恨み続けている。
 
わたしは不幸だ。この世に生まれてきてしまった。パパとママはけんかばかりしているし、友達もわたしを仲間はずれにする。何もいいことはない。かといって死ぬのもこわい。わたしは両親を恨み続けている。
 
どうしようもないことを振り返ってもしょうがない。彼らに対してそう思っていました。恨めば幸福が戻ってくるわけではない。どうして意味のない考えを持ち続けるのか。
しかし私も、あるとき意味のない恨みに取り付かれてしまったのです。これは消えてくれるまで持病のようになだめすかして付き合うしかないとわかりました。
痛みと同じで、自ら生じさせているわけではないのです。それがもたげてくる要因を遠ざけること。アレルギーと同じです。あとは待つしかないのです。