【小説】勇者と浮世の恋

今から魔王を倒しにいく。
もう充分レベルも上げたので簡単に倒せるだろう。
しかし私は思うのである。村の娘さんは私を好いてくれていた。しかし私には想い人がいるのでその娘さんの好意を拒否してしまった。私も苦しい恋をしたことはある。娘さんの苦しみはわかる。そしてその娘さんの苦しみは私が魔王を倒そうが倒すまいが変わらない。どちらにせよ私が娘さんと一緒にならないことに変わりはないのだから。
私が魔王を倒すことは本当に世界のためになるのだろうか。
魔王軍との戦闘状態が続こうが終わろうが、世の恋の苦しみは変わらないだろう。
そう思ったらわからなくなった。私は魔王城の門を前に、引き返した。