【小説】悲しい眠り姫

昔々ある国に、一人のメンヘラ女がおりました。この国の王さまがこの女の色気に嵌まってしまい、周囲の反対を押しきってこの女を妻に迎えてしまいました。

王さまの周りの者たちは、跡継ぎは別の者に生ませて、どうか二人の間に子供だけは作らないようにと釘を刺しておりました。メンヘラの子供ほど可哀想なものはないからです。王さまと女王さまは、しぶしぶ承知しておりました。

しかし、まもなく女王さまは御懐妊なさってしまいました。周りの者に二人は謝って言いました。「ついうっかり。」

お姫様誕生のお祝いにたくさんの人が集まりました。お姫様がお生まれになったことに、お祝いの言葉を述べないわけにはいきません。皆棒読みでお祝いを述べましたが、心の中は一様に絶望的な悲観でいっぱいで、うつむいて暗い顔を隠していました。

お姫様は生まれた瞬間から女王さまからのの精神的虐待を受けていたので、赤子にして既にメンヘラの仲間入りをしていました。

あまりに酷い状況を見かねた魔女が、お姫様に薬を処方してあげました。この薬のおかげでぼうっとなって、ひどい悲しみや苛立ちや執着や憂鬱の感情が薄まり、自分や他人を傷つけたりしなくなるのです。お姫様はすでにかなりきつい薬が必要な状態でした。ひどい状態をおさめるためには、覚醒度を低下させて、ほとんど夢うつつの状態に持っていくしかありませんでした。また、女王さまはもちろん、王さまをはじめ周りの者も女王さまの言動に疲れはてて心を病んでおりましたので、同じように薬を処方してあげました。

かくしてこの城は手入れする者がいなくなった茨や蔦に覆われ、眠りの城となったのでした。

国民たちはこの城の地獄が最早これ以上猛威をふるわないことを知り、魔女にたいへん感謝し、自治を始めたのでした。

時がたち、事情を知らない外の者が観光気分でこの城を訪れました。そしてベッドに横たわり惚けたようにうわ言を喋り続けるお姫様の色気にやられて、手込めにしてしまいました。ラリったお姫様ものりのりで相手になりました。

そうして二人の間には三人目の不幸な悪魔が生まれ、この国の地獄は続きましたとさ。