【小説】千年待つ

あの人が行ってしまってから千年。私は待った。あの人が帰ってくるのを。

 

辛かったのは最初の半年だった。あの人は突然いなくなった。最初はすぐ連絡が来るだろうと思った。来なかった。日を追うごとに心は乱れた。いつしか何も感じなくなった。考えなくなった。

半年たって連絡が来た。あの人からのメッセージに何があったのかが書かれていた。当時疫病の蔓延で危機状態だったQ星。そこへ派遣されている医療チームのリーダーが倒れた。あの人は代わりに駆けつけることを余儀なくされた。あの人は私と同じく生身の体は既に捨てているので感染することは無い。誰に告げる暇もなかった。ワープゲートをくぐってQ星についた。少し落ち着いてから私に連絡をくれた。ワープゲートは連絡用にも個人で使うことは禁止されている。だから私がメッセージを受け取るまで半年かかったのだろう。疫病はほぼ収束したが、あの人は引き続きQ星で働くこととなった。千年後に、会おう、と書かれていた。

その先はこの辛かった半年とは違う。あの人の事情もわかったし、次に会う約束もある。それがあれば私は生きていける。

 

そして千年がたつ。あの人はもうこちらに向かっているだろうか。私は落ち着いて待つ。安心して待つ。約束があるから。

あの人からメッセージが来た。

「滞在期間があと千年伸びた。あと千年後に、会おう」

会う約束ができた。それがあれば何も辛くない。私はあと千年、喜んで待つことにした。