2018-03-05から1日間の記事一覧

【小説】恐ろしい世界

爆発物を使った危険な遊戯。多くの人がのめり込む。安全装置が存在するのに、死亡事故が頻発する。事故を起こした者になぜ安全装置をかけなかったか聞くと、ついつい、面倒だったからと答えが返ってくる。そうしてそれを聞いた者も、多くの場合、そんなもの…

【小説】メデューサのパンツ

同じクラスにメデューサと呼ばれている女の子がいた。学校ではスカートめくりが流行っていたのだが、彼女のスカートの中を見た男は石になってしまうらしいのだ。そんなことになっては取り返しがつかないので、彼女はいつもズボンを履いていた。 メデューサは…

【小説】誕生日

「ハッピーバースデイ!」 集まってくれた皆がクラッカーを鳴らし、拍手をしてくれた。私は笑みと共に、飛び石をひとつ埋めた。 こうして誕生日が来る度に一つずつ埋める飛び石は、生まれたときに建てた墓まであと半分ほどの距離になった。 「ありがとう、み…

【小説】平等

高架下の広場に物乞いがいる。 乾パンの空き缶を前に置いて、黙って呉座に座っている。 この街にも他にもホームレスはいるが、こんなふうにあからさまに物乞いをする者を私は今まで彼以外に知らない。 私は彼を初めて見たときから、心の中で密かに彼を讃え応…

【徒然】

残酷なこと考えたり書いたり読んだりしても、それを実行してしまうのは気持ち悪い。 かつて聞いたその考えがふいに実感できたことであった。

【小説】生物N企画会議

…以上が今度進化実験を開始する生物Nのデザインの大まかな説明になります。 ポイントは、家事、仕事、コミュニケーション等についてよくできる個体は性欲と性的能力も強くしてあるところです。これによって優秀な性質が残っていくことになります。 それに、…

【小説】ニートミーツガール

アイドルユニット、シュフズのメンバーは二人とも専業主婦である。が、経歴は随分違っていた。 マナカ(28)は有名大学を卒業後、大手企業に就職。明るくリーダーシップがあり、それでいて気配りができる優しさを持ち、慕われる。たくさんの革新的企画を成功…

無題

両手にはおさまらないほどの、でもすぐに数え終わるくらいの、あなたに会った時間のそれぞれの始まりと終わりのあなたが手を振る姿がぼやけた体積をもって並んで縮んで伸びていつか終わる。欲しいのはあなたじゃなくてあなたの何かじゃなくて、ことばといつ…

【小説】ボトルレター

つまらないことに手を出して、島流しにされた。 この仮想空間内の無人島は常夏で、食べ物と寒さに困ることはない。その代わり、見渡す限りの海には人の気配は一切無く、外からの情報は何一つ受けとることができない。 このような島が一人一人の受刑者に用意…

【小説】都会のゾンビ

サトコは乗車券を握りしめて特急に乗った。今日は憧れ続けた都会での生活が始まる日だ。 娯楽にあふれ洗練された優雅な生活。幸せな恋と結婚と家庭。都会に行けばそれが手に入る。狭い世界で手に入らなかったものが、都会でなら、自分にだって手に入る。 土…

【小説】生物Nについての研究

生物Nには大きく違う二種類の個体がいる。繁殖型と非繁殖型である。 繁殖型は総じて優秀である。食糧や住処の確保および維持の効率の良さ、同種の生物とのコミュニケーション能力、判断能力、記憶力、行動動機の強さ、運動能力。全てにおいて非繁殖型とは比…

【小説】ニートの人生

人はすべからく働かなければならない。生まれてきた人間は必ず自分を養っていかねばならない。もしそれが出来なければ、生きる権利はない。いつ消されても、消えざるをえなくなっても文句は言えない。 そう、親がいつも言うとおり「働かないと生きていけない…

【小説】千手さまと一人の愚民

僕は周りの皆より、たいていなんでもよくできるみたいだ。躍りで一番高くまで飛び上がれるし、かけっこも一番だ。千手さまにもらうミカンの皮を上手に剥けるし、十より大きい足し算ができるのも、僕しかいない。 そういうところを見ると、皆は僕をすごいと誉…

【小説】三分生命体

少しでも気に入ってもらえているかもと勘違いしたくない。次に期待してしまいたくない。 だから私の友達は皆、寿命が三分しかない。 電気的知能が、人間と同じレベルの反応を返すほどに発達するのとほぼ同時に、人々はそこに人格があると認め、人間と同じ扱…