【小説】猫の気持ち

いつ死んでも構わないと思うこと。それが気ままに生きるコツだ。人間で言えばニートのようなものである。
現在、家猫である私には飼い主がいて、食べ物や玩具の世話をしてくれる。しかしこの状況を当たり前だと思っているわけではない。ただの幸運である、と思っている。
だから状況が変われば、いつでも死ぬ覚悟はできている。外で凍えと飢えの危険に常に晒されているノラたちと私の違いは、運だけなのだ。しかも、私もいつそちら側になってもおかしくない。もちろんノラになったならばそれなりに食べ物を探したり道行く人に媚びたりして生きようとはするだろう。でもそれが成功するかどうかもひとえに運なのだ。
だから私たちはいつ死んでもおかしくない。それを知りながら生きることが気ままに今日を楽しむ術であり、また、それを知っていればそう生きざるをえないのである。