【小説】似た人

最愛の妻が事故で死んだと知らせを受けたのは海外の出張先でだった。即死だったそうだ。会いに行くこともできなかった。
田舎に帰ったときに大規模な災害に遭ったらしく、情報は交錯していた。
何を考えることもできなかった。ただ悲しく悔しく、状況を憎み、抗った。事態を受け入れられないことが苦しみをより強くしているとわかっていた。しかし日本に帰れば本当に妻がいなくなってしまうような気がして、どうしようもなく事実を目の当たりにしてしまうような気がして、動けなかった。
結局、気持ちが落ち着くまで出張先の国で暮らした。時間をかけて妻が死んだと認めることで、私はなんとか心を取り戻し、日本に帰る決心がついた。
家に帰ると、死んだ妻に瓜二つの女がいた。
「おかえりなさい、あなた。長い出張本当にご苦労様」
女は死んだ妻と同じ声で言った。
しかし私は断じてそれを妻だと思ったりはしなかった。なぜなら私は、もう大丈夫、妻が死んだと認めたことで、すでに苦しみから解放されて、まともな心理状態を取り戻したのであるから。私は既に健全に潔く正しく認めたのだ。妻は死んだと。
そう認識できたことが私を救ったのだ。もう疑ったりするものか。