【小説】生存本能

私にかけられた呪いの名は生存本能といった。生まれながらに持っていた欠陥。

私は死ぬのが怖かった。面倒でも生き続けるために自分の世話をし、戦いに出ることも避けた。どんなに退屈でそこから逃れたくても消えてしまうのは怖かった。これでは何のために生まれてきたのかわからない。周りは私を変人だと言い、あるいは蔑みあるいは同情した。

そんな彼らもやがてみな戦いで死に、知っている者はすぐにいなくなった。それからまたたくさんの者が生まれて私の傍らを通りすぎ死んだ。

 

気の遠くなる時間が過ぎたある時、世界の死と呼ばれる者が生まれたという噂を聞いた。それは辺りを荒らし回り、やがてついに隠れていた私を見つけた。怖い、死にたくない、痛い、例の呪いが発動して、しばらく私の心身は地獄のように苛まれた。これまでに感じたことのないほどだった。この苦しみから逃れられるなら死んでもいいと少し思った。それでも呪いは重く、まだ死ぬのは怖いと思った。

それでも最後にはこう思った。やっと死ねる。

 

それは世界が終わるのとほぼ同時だった。最後の白血球である私と共に体は終わりを迎えた。