【小説】地中の生き物

田んぼのように四角く、雑に土が掘られていた。私たちはそこに並べて横たえられた。
もう誰にも自力で起き上がる力はなかった。上から土がかけられた。私たちはかろうじて虚ろな目で彼らをにらむだけだった。たまに何人かが弱い声でうめいていた。私たちは完全に土の下に埋められた。

 

土の中は意外と暖かかった。私たちは食べ物を探さなければならなかった。動かぬ体だがなんとか頭の先で土をよけて地中を進んだ。虫や葉があったのでそれらを食べた。そのうち皆だんだん蠕動運動がうまくなった。
数年がたっただろうか。私たちは土の中でたくさん寝てたくさん食べ、元気を取り戻していった。やっと自分で起き上がれるほどの力が戻った。おもむろに体を起こし土から顔を出した。誰もいなかった。建物はほとんど壊れ果てていた。戦争は終わったのだろうか。

 

足の感覚を思い出しながら久しぶりに歩いた。私の家は奇跡的に形をとどめていた。

家に戻って暮らした。家を失った者の内何人かが私の家で一緒に住んだ。
埋められる前後のことは記憶が定かでない。弱っていたし頭もぼんやりしていた。私たちはかくまわれたのだろうか。
日々は過ぎていく。たまに土の暖かさを思い出したくなって、天気のいい日に畑に寝転んだりしている。