【小説】機械の余生

取り込んだ燃料をエネルギーに変える。出来たエネルギーと、その為に使われたエネルギーと、どちらが大きいのかもう分からない。我々はかつて動く為に補給し、人の役に立っていたはずだった。
自動機械のみなさん、おはようございます。今日も健康を保つため運動しましょう。
一部の権利擁護派の声のおかげで、古くなった我々は処分されずにこの区画でまだ「生きて」いる。
空のコンテナを積み上げては崩す。そんな意味の無い作業を続けて歯車が固まるのを防いでいる。ではなぜ固まってはいけないのか。我々はゆっくりとついえてはいけないのか。誰もが感じているその問いを口に出すものはいない。
今日の作業は終了、自由時間です。
その日の作業が終わると処理すべき情報は何もなくなる。適当な場所にただ突っ立って、何もしない。何も考えない。すると明日が来てまた補給と運動をする。
素敵な余生。時には作られてすぐにここへ来る機械もいる。欠陥があったものや働かないことを「選んだ」ものたちだ。