【小説】異世界小説

異世界に転生した俺は、魔法、剣術、他のあらゆるスキルを失っていた。武器もアイテムも何も持っていない。
とても焦った。このままではすぐにやられてしまう。転生後の俺の体は小さく、周りのものが大きく見えた。
一人の者の手が俺の方に伸びてきた。やられる。もう終わりか。そう思ったが手は俺の頭を撫でた。どうも敵ではないらしい。他の同種の生き物たちも、俺に好意的なようだ。自分自身をよく見ると、全体や各部の縮尺は違えど俺もそいつらと同じ形をしていた。
そいつらがこの世界の言葉で俺に話しかけてきていた。しかし何を言っているか全くわからない。わからない言葉を毎日聞かされた。
さすがに次第にこの世界の言葉を覚えてきた。覚えが早い、この子は頭がいい。彼らは俺の様子を見てそう言った。
さらに時がたった。俺は昼間に集まって集団生活をする場所に通わされていた。朝そこに出向き、昼過ぎに塒に帰る。そこで話されている言葉も同じ言葉なので、意味はわかった。しかし時がたつにつれて俺の周りで話される内容は複雑になっていっていた。俺の中の言葉に翻訳はできる。でもその文を見ても、ではこれから何が起ころうとしているのか、そいつは何をしたいのか、俺に何を言いたいのかはわからなかった。結局俺は言葉がわからないときと同じように、目前に現れることに一々驚いて過ごした。俺にとってはそれらは突然現れたが、もし言葉がちゃんとわかればそれらは予め説明されている事だったのだろう。
そんなふうに周りのことがわからず、俺はやっかまれているようだった。
また時がたち、ギルドに入るよう言われた。やっとまた活躍できる。なんのスキルもないままだがまた仲間と戦えるのだ。しかしこの世界では敵と戦う職業はほとんどないようだった。仕方なく、机に向かって何かの作業をする職業についた。周りの者がやたらに話しかけてきた。やはり自分の中の言葉に訳すことはできるのだが、それでどうすればいいのかわからなかった。そうこうしているうちにその職を追われた。他にもいくつかの職についてみたが、どれも同じことだった。
なんという世界に転生してしまったのだろう。無理ゲーすぎるではないか。