【小説】夫婦漫才ヒト&マモノ

「どうもー、ヒト&マモノですー」
「よろしゅう」
「わしがヒトで、こっちのマモノみたいな顔してるんが」
「マモノですー、て、ほんまのマモノの顔や、これが」
わははははは
「私らもうコンビ組んで十年やけど、出会った頃のこと覚えてる?」
「もちろん。今のわしらに繋がる大事な思い出やからな。お前がわしに惚れて言い寄ってきたんやったな」
「そうそう。あんた顔だけはええからな」
「うるさいわ。で、わし初めはお前のことヒトや思たから、付き合うことにしてもうたんや」
「私の魅力に参ってしもたんや」
「はいはい。ところがどっこい実はマモノやった。ヒトがマモノと付きおうとったんやで」
わははははは
「で、わしはそれがわかってすぐにお前が家来れへんように引っ越して、電話番号もみんな変えたんや」
「そうそう。酷いわー」
「マモノやったんやから当たり前やろ」
わははははは
「それでも私あんたの引っ越し先見つけ出して、包丁持ってドア破って乗り込んでったんやっけ。愛やなあ」
「わし絶体絶命やんけ」
わははははは
「で、あんたも包丁出してきて、刺しちごうて二人とも入院してしもたんや」
「そうそう。乱闘なったときお前が頭打って記憶なくしとったんがわしには幸運やった。」
「ほんまに。そうやないと私またあんたんちに包丁持って押し入っとったやろからな」
「恐ろしわー。そんな怖い体験したけど、わしの夢は漫才やることやった。だからこの変な出会いを生かそうと思った。お前はもうわしのこと好きやのうなってたから、命の危険はなかったからな」
「それでコンビ結成したんやったね」
「あれ、ところでお前あのときのこと覚えとるておかしない?」
「あんたがネタにしたから思い出してしまったんや。思い出したらまた好きになってしもた」
ヒト、全力で走り会場から逃げ去る。一同騒然。