【小説】異世界夫婦

あるとき別の世界から一組の夫婦が移り住んできました。二人はできる人たちだったので、新しい世界の習慣にすぐになじんで、まるで元からずっとこちらの世界で暮らしている人のようでした。
しかし二人だけでいるときは、地元を懐かしむかのようにかつての習慣を維持していました。二人だけのときはかつていた世界の言葉で話しました。部屋着は全てヒョウ柄か動物の顔のモチーフでした。家の壁には動くカニのオブジェが飾ってありました。玄関には足の裏を見せたつり目の男の人形。一息つく度にお互いに、飴ちゃんを交換しました。会話の全てはボケとツッコミという作法に則っていました。
そうして二人は同郷の絆を深め、地元を懐かしがるのでした。